ラスタ図面のトレース(測量図面編)
概要
ここに説明する方法は、ラスタ図面上に基準点や境界点などの図面の基準となるポイント(座標グリッドでも良い)が図示されている事、またこれらのポイントの測量座標値が必要です。
スキャナーを使用して読み取ったラスタ図面は、原稿の状態によって異なりますが、多かれ少なかれ歪みや伸縮が存在します。この歪みや伸縮を出来るだけ補正を行うために一枚のラスタ図面に対して3点~4点(出来れば4点)の基準となるポイントが存在することが望ましいです。
(HO_CADPaoは「一点固定+大きさと回転」と言う方法も有ります。)
補正後のラスタ図面を背景画像として「線引」コマンド等によって、トレースを行っていきます。以下の順に説明します。
手順
1.【スキャニング-ラスタデータ(図面)の取得】
トレースを行う紙図面等をスキャナーを使用してラスタ図面を取得します。
スキャナーから読み取る時に原稿となる図面の状態を考慮して適宜、解像度を指定して読み取りを行います。一般的には、200dpi~400dpiで良いと思います。
次に進む前にスキャニングによって得られたラスタ図面のドキュメントサイズ及び解像度を確認しておきます。
W(mm)=(7085×25.4)/300=599.86mm
スキャニングを行う時に読取解像度と同様に重要な事が「色深度」です。
デジタルカメラで撮影したカラー写真は、一般的に「24ビットカラー」と呼ばれるRGB各色8ビットの色深度を持っている画像データです。
トレースを行う紙図面をスキャニングする場合には用紙の大きさにもよりますが、出来るだけカラーを避ける事、また解像度も必要以上に上げない事が重要です。
処理するパソコンの性能にもよりますが、A1図面であれば解像度が300dpi程度を上限として、ファイル形式を白黒2値のTIFF-G4が良いと思います。
(白黒2値以外では背景色の透明化と色指定が出来ません)
2.【HO_CADPao-基準ポイントの座標値入力】
HO_CADPaoを起動して新規図面を開きます。
《新規図面を開く》[入出力q]→[ファイルL]→[開くR]→[テンプレートを開く]→[OK]
3.【HO_CADPao-測量座標系の設定(北方向+Xと原点の設定)】
「測点一覧表」から基準ポイントの座標値を入力した状態でHO_CADPao新規図面には入力された基準ポイントが表示されています。
この状態では北方向(+X方向)が新規図面の上方向になっていますので、測量座標系の設定を実行してラスタ図面と同じように斜方眼を設定します。
回転角度が予め分かっている場合には、その回転角度をキーボードから入力すれば良いのですが、数値で分からない場合にはラスタ図面上の座標グリッドや方位マークを使用して北方向(+X方向)を指示する事になります。
※ 座標グリッドも方位マークもラスタ図面上に無い場合には基準点や境界点等の座標値が分かるポイントを使用してX・Y座標差から+X方向を計算します。
a-1.ラスタ図面の方位マークから北方向を指定する
《ラスタ図面読込》[画像等R]→[1画像読込]→1[読込位置始点 読取R]→2[読込位置終点 読取R]→[ダイアログボックスで読込むラスタ図面ファイルを開く]
この段階で図6の状態になります。次に座標系の設定を行います。
《北方向の設定》[測量b]→[3座標系設定]→[1図面上の北方向設定]→[1マウス角度R]→この段階でメニューバーが「1計測方法【X軸基準】」になっている事を確認して3[原点マウス指示任意L]→4[角度点マウス指示任意L]、この段階で北方向(+X方向)が方位マークの方向に設定(回転)されます。
何度回転したのかを確認したい場合には、再度[測量b]→[3座標系設定]→[1図面上の北方向設定]に進めば、指定角度=[***.*******]に表示されます。
a-2.ラスタ図面の座標グリッドから北方向を指定する
事前に座標グリッド等に従って[線引X]コマンドにより正確に北方向の線分を作図してある場合には[図6]において、5[原点マウス指示読取L]→6[角度点マウス指示読取L]で指示する方法がより正確に北方向を設定出来ると思います。
b.座標原点を指定する
a-1またはa-2によって測量座標の北方向(+X)を設定する事が出来ました。既に基準点などの測点が入力されていると自動的に全体の中心位置が図面の中心に表示されていると思います。
もしも測点が入力されていて表示されていない場合には[測量関係の設定]画面で非表示に設定されて無いか等を確認してください。
《座標原点を指定する》[測量b]→[3座標系設定]→[座標原点マウス指示任意L]マウスでラスタ図面上のT01を指示します→[測量基点座標入力]画面が表示されるので[参照]クリック→[測点参照]画面が表示されるので測点名T01を指定[OK]→[測量基点座標入力]画面に戻り[OK]クリックすると、入力済み測点T01がラスタ図面T01に設定されます。
HO_CADPaoではこのズレを出来るだけ少なくするための[変換点を指示して補正する]機能を備えているので、この機能を使用して補正を行っていきます。
ここでは、ラスタ図面の補正を判りやすく操作するために配置したラスタ図面を一旦削除します。
《ラスタ図面の削除》[画像等R]→[4消去]→で消去したいラスタ図面をクリックすると指定したラスタ図面を削除出来ます。
4.【HO_CADPao-ラスタ図面を配置】
サンプルは2枚のラスタ図面を配置する例です。「測量座標系の設定」でラスタ図面を配置するおよその位置は既に判っているので、その位置にドキュメントサイズの四角形を作成してラスタ図面を配置します。
5.【HO_CADPao-ラスタ図面を設定済み測量座標に補正】
《変換点を指示して補正》[画像等R]→[マウス指示編集L]補正するラスタ図面を指示する→[1変換点指示補正]→[補正返還前1点目マウス指示L]一点目のラスタ図面上のT29-1マーク中央をマウスで左クリック→[補正返還後1点目マウス指示R]一点目の既知測量点のT29-1マーク中央をマウスで右クリックします。
一点目の指示が完了すると「変換リンクテーブル」画面が表示されます。以後同様に二点目、三点目、四点目の変換点を指定します。
その他の変換方法は指示した変換点の数によって変わってきます。
ここでは四点指示ですのでアフィン変換で「アジャスト実行」ボタンをクリックして補正を実行します。
大判スキャニング作業の原稿図面の状態によっては不規則なズレが生じる事も有ります。出来るだけ折り目や伸縮などが無い状態の原稿図面をスキャニングする事によって良好な結果を得る事が出来ます。
同様に残りの一枚のラスタ図面も四点指示で補正を実行します。
6.【HO_CADPao-ラスタ図面の背景色をトレースし易い色に変更】
同様に右側のラスタ図面も背景色を変更します。
ここでは、補正したラスタ図面がどの程度のズレが発生しているのかを判りやすく表示するために、左右の背景色を異なる色に変更してみました。少しズレが発生していますがおおむね良好な結果になっています。
7.【HO_CADPao-「線引」コマンド等によってトレースを行う】
測量図面のトレースを行う場合には[+H]、[/X]、[□B]、[複線F]、[○E]、[(N]等のコマンドを使用します。その他に[変形h]や[図形n]を使用すると生け垣、コンクリート被覆、有刺鉄線、地類分類、電柱、マンホール等を素早く作図する事が出来ます。HO_CADPaoはこれらの便利な機能「線変形マクロ、図形」をユーザーが自由に作成する事が出来ます。